五拾音(ごじゅうおん)は、産業翻訳者 azm の屋号です。
経験と実績
ヨーロッパ系ビジネスアプリケーションベンダーの社内翻訳者として約8年を過ごしたことで、いわゆるソースクライアント社内におけるローカライズの現場で経験を積むとともに、外注先となる翻訳会社とのやり取りも経験しました。見よう見まねでスタイルガイドも作りましたが、いま思うと反省点が多いです…。
また、ローカライズ/翻訳された製品を実際に使う立場の人からフィードバックを得たことも大きな経験となっています。その会社が扱っていた製品は、生産管理から会計まで多様な業務をカバーしていたのですが、特に専門的な部分については当時のインターネットでは十分な情報が得られるとは限らず、大型書店などで専門書を片端から立ち読みすることもありました。独特の言い回しなどは、専門知識のある現場スタッフに質問できることがありがたかったです。
後にフリーランスの実務翻訳者として独立したとき、MLV(マルチランゲージベンダー)でのオンサイト案件を経験しました。思いがけず、翻訳エージェントの内部で仕事の流れを知ることができました。
その後しばらくはIT分野の翻訳者募集に応募することで少しずつ取引先を増やしておりましたが、最近では、業界のイベント等で知り合ったエージェントの方やSNSを通じて知り合った同業者の方などから直接お声を掛けていただくことも増えております。分野がITということもあり、現在の主なお取引先は、グローバルに事業展開するMLVが大半を占めています。
強み
私の翻訳者としての強みは、全体像を見渡す力があり、読者や案件に適した言葉の選び方ができることだと考えています。
会社員時代には、自社製品の翻訳(ローカライズ)業務、また翻訳会社との外注業務を担当。用語集やスタイルガイドの整備も一から経験しました。また、翻訳された文章を使う立場の人の考え方も見聞きしてきました。フリーランスとして独立してからも、翻訳会社でのオンサイト業務を3か月ほど経験。結果として、翻訳のワークフロー全体を知ることができました。こうした経験は、フリーランス翻訳者として受注側となってからも、求められる翻訳を提供するうえで役立っています。
一方で、翻訳の仕事以外にも、ボランティア団体で広報担当として見よう見まねながら、イベントの企画、調整、宣材の作成、プレスリリースの投げ込み、SNSでの情報発信など、さまざまな経験を積んでいます。翻訳とは直接の共通点はなくとも、対象読者はどのような人なのか、相手の共感を得るにはどうすればいいのか、といった意識づけは、文章の書き方にも影響していると思います。
良質な翻訳とは
一方で、実務翻訳の品質評価の難しさについては、2014年JTF翻訳祭のセッションでも取り上げられました。つまり、こういうことです。評価を担当する人の好みによる(担当者が変わると指示が変わる)ことも、実際のところ少なくなくありません。肝心な情報(クライアント社内の人しか知らない情報)が翻訳時に提供されないことで正しい解釈ができないケースについて、翻訳者の能力不足であるかのような指摘を受けることもあります。こうしたギャップは、こまめなフィードバックのやり取りがあることで少しは改善されるのかと思いますが、「望ましい翻訳」に近づける相互努力と、(たとえば発注先の選定のために)品質評価を数値化することとは、次元が違うように思います。このあたりについて、クライアントや翻訳会社、翻訳者の間で意見交換の機会があり、目指す翻訳について共通認識ができるのが理想です。
私個人としては、発注側(ソースクライアント企業)の社内翻訳者として7年勤務した経験があり、翻訳業務にはさまざまな制約(コストや時間)が課せられることを理解しています。また、翻訳された文章を使う立場の人の考え方も見聞きしてきました。こうした経験は、フリーランス翻訳者として受注側となってからも、求められる翻訳を提供するうえで役立っています。